☆子供の成長を見て、母子関係も重視します。
子供のアトピー性皮膚炎は大人と同様、食べ物やダニ、ホコリ、花粉などのアレルゲンに対して、体が過剰に反応して起こる疾患です。
「子供が大人と大きく異なる点は、彼らが成長過程にあるということ。心身の成長を視野に入れた治療で、アプローチします。
例えば、乳幼児は腸管が未発達なため、アレルゲンとなる食物(抗原)が、腸管粘膜のフィルターすり抜けて、直接体内に取り込まれやすくなり、アレルギーの原因になります。
子供の腸管は生まれてから3~5年かけて、ゆっくりと成熟していくため、離乳を急ぎ過ぎないように指導し、腸管の発達をサポートする漢方として「黄耆健中湯」を処方します。
「黄耆健中湯は、甘くて、おいしく、飲みやすい漢方です。黄耆は皮膚の機能を高め、甘草と膠飴が消化管粘膜を保護して、腸管の発育を助け、皮膚を潤す働きがあります」
また、健やかな睡眠は子供の成長発達に不可欠ですが、アトピーによる強い痒みのため、夜間不眠の子も少なくありません。このような場合は、「甘麦大棗湯」を処方して、情緒の安定をはかります。
年齢が長じて、学校生活における人間関係など、ストレスが関与する場合は、「抑肝散」などの柴胡剤を用います。
他に、夏場の湿気と暑気で痒みが増強し、滲出液が出てくるタイプには「消風散」を、熱感が強い場合には「白虎加人参湯」を選択します。
また、患者の顔色や表情、姿勢など、全体を”みる”望診も大切です。五感を研ぎ澄ませて、不安や悩みといった患者さんの心の状態など症状の奥にあるものをしっかり”みる”ことが、的確な診断には欠かせません。
そして、アトピー性皮膚炎の子供とお母さんの関係も重視しています。アトピーの子供を持つ母親は、治そうと必死になるあまり、子供の反応に過敏になり過ぎる傾向があります。
子供は、成長する力を内に秘めています。たくましい成長と自然治癒力による驚くべき改善もしばしば起こります。時には心身のバランスを整えるため、お母さんにも漢方を処方します。子供の力を信じて、おおらかに接していけるよう、お母さんを支えていくことも大切です。